定額減税　与党税調幹部は「1年限りの認識」　自公に温度差も

自民、公明両党の税制調査会は27日、非公式の幹部会合をそれぞれ開いた。岸田文雄首相が26日、2024年6月から実施する方針を示した1人当たり計4万円の「定額減税」など、24年度税制改正に向けた議論を本格的に始めた。自民党の宮沢洋一税調会長は会合後、所得税と住民税の減税期間について「（税調幹部は）みんな1年限りとの認識だ」と述べた。ただ与党内には、景気が悪化した場合に期間を延長する「景気条項」を検討すべきだとの意見が出ており、減税を巡る議論は曲折の可能性がある。

税制改正議論　本格スタート
　政府は26日、所得にかかわらず一定額を差し引く定額減税という手法で、所得税を3万円、住民税を1万円それぞれ減税する方針を示した。

　自民、公明の税調は27日、この方針を議論した。自民税調は減税の期間を1年とする認識を共有した。

　「景気条項」をつける考えについて、会合終了後、宮沢氏は「まったくない」と減税を1年で終了する考えを示した。一方、公明党の石井啓一幹事長は「検討課題だ」としており、今後調整が必要となりそうだ。

　定額減税の所得制限については、自民税調幹部の一人は「高所得者まで減税対象とする必要があるか、議論した方がいい」と主張。宮沢氏も「これから税調の議論の中で検討する」と述べた。

　与党税調内では一定の制限を設けるべきだとの意見があるが、岸田首相は26日夜、「（所得税や住民税の）定額減税は子育て世帯の支援の意味合いを持つ。子育て世帯の分断を招くようなことはあってはならない」と述べ、制限を設けることに否定的な考えを示した。今後どの程度の年収を「富裕層」とし、減税対象から外すのかなど、水準を巡る議論に発展する可能性がある。

　また、岸田首相が指示した減税と給付金の案では、所得税、住民税を納税しているが額が少なく、住民税非課税世帯への給付対象からも外れる層がいる。これらの人への制度設計も検討課題になる。

賃上げ税制　延長の見込み
　24年度税制改正を巡っては、所得税や住民税などの定額減税以外にも複数の減税項目を議論する見通し。

年末に向けて議論される主な減税項目
　一定の賃上げを実施した企業が法人税減税を受けられる「賃上げ税制」は、23年度末の期限の延長が検討される見込み。岸田政権は賃上げを重要テーマと据えるが、現行の仕組みでは法人税納付がない赤字企業は恩恵を受けられない。減税の恩恵を受けられる期間を翌年度以降に繰り越せる「繰り越し控除」の制度のあり方を考える。

　事業承継にかかる贈与税や相続税の納付を猶予する「事業承継税制」は、23年度末の申請期限を延長するかどうかが課題だ。

　新設を検討する主な減税措置としては、「イノベーションボックス税制」がある。特許などの知的財産から生まれた所得に対する減税を検討する。また、国際情勢の影響に左右されない供給網の構築が必要な半導体や蓄電池などの物資に関する「戦略物資生産基盤税制」は、国内での生産量や新規投資額に応じた法人減税を検討する。【中島昭浩、浅川大樹】

毎日新聞　2023/10/27 22:11
https://mainichi.jp/articles/20231027/k00/00m/010/392000c