あなたが買った魚も実は…タイで横行する「海の奴隷」救うNGOの活動が映画に

まともな賃金をもらえずに漁船で長時間働かされ、「海の奴隷」とも呼ばれる人たちの救出に奔走するタイ人のパティマ・タンプチャヤクルさん（46）の活動を描いたドキュメンタリー映画「ゴースト・フリート　知られざるシーフード産業の闇」が28日から、シアターイメージフォーラム（東京都渋谷区）など各地で上映される。活動の影響で脅迫を受けることもあるが、動じないパティマさん。その勇気の源泉はどこにあるのか。

◆水産業が盛んな裏で

　タイでは水産業が盛んな一方、報酬を与えずに、眠くなると鉄パイプで殴って働かせるなど、他国出身の労働者も含めて人権を無視した漁業が問題視されてきた。2015年には欧州委員会がタイに警告を発するなど、国際的に注目されている。映画では、こうした労働者の報酬を漁業会社から取り立てたり、故郷に連れ戻したりするパティマさんの奮闘を描く。
　パティマさんは04年、夫とともにNGO「労働権利推進ネットワーク（LPN）」を立ち上げ、移民労働者の子供たちの教育支援を開始。10年ごろ、漁船から脱走したミャンマー人らから「海の奴隷」の存在を聞いて動きだした。これまで、インドネシアの島々などに監禁されていた少なくとも約5000人を出身地に戻すなどしたという。

　悪質な漁業会社側からは、脅迫電話や銃を向けられるなどの嫌がらせを受けてきた。オンライン取材に応じたパティマさんは「数千人の命を救うために自分の命が失われても仕方がない。それより彼らを帰さなくてはと思っているから全く怖くない」と話す。
　パティマさんらの「救出作戦」を契機に、タイ政府は14年、違法な労働を課している漁業者対策を強化する法律を制定。19年1月にはILO（国際労働機関）の漁業労働条約を批准するなど、状況は改善に向けて動いている。

しかし記事は望月イソコ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/177837