【革命】三菱電機と広島大、アルミとステンレスの溶接に成功。

三菱電機と広島大、金属3DプリンターでアルミとSUSの異材接合に成功
2023.07.18　日経ものづくり

三菱電機と広島大学は、三菱電機の金属3Dプリンターを使い、アルミニウム（Al）合金とステンレス合金（SUS）を接合する技術を「世界で初めて」開発した。
両合金は相性が悪く、溶接がほぼ不可能とされてきた。今回開発した新しい異種材料接合技術により軽さや耐腐食性、高強度といった両合金の強みを兼ね
備えた部材の製造が期待できる。船舶や自動車、航空宇宙分野などでの活用を見込み、3年後の実用化を目指す。

Al合金とステンレス合金を溶接しようとすると、接合面に金属間化合物が生じ、これが接合部の強度低下を招くという課題がある。
両者は通電した金属ワイヤを供給して溶接する「ホットワイヤ法」 に、高出力半導体レーザーによる加熱とフラックスの塗布を組み合わせて、
金属間化合物が生じにくい接合技術を開発した。

ホットワイヤ法は通電したワイヤを溶融池に供給する手法で、基材とワイヤに加える熱量をそれぞれ細かく制御できるという。
ワイヤへの通電とレーザー照射でワイヤを溶かしつつ基材のステンレス合金への溶け込み深さを最小限にすることで、金属間化合物の発生を極力抑えた。

ホットワイヤ法とレーザー照射の装置として用いたのが、三菱電機の金属3Dプリンター「AZ600」だ。AZ600は、指向性エネルギー堆積（Directed Energy Deposition、以下DED）
方式の3Dプリンターで、ワイヤで送給した金属材料をレーザーで溶かしながら積層造形する。基材へのワイヤ送給とレーザーによる加熱という機能を備えており、
上記接合技術との親和性が高い。実験では基材に厚さ15mｍのステンレス合金「SUS304」 、ワイヤに直径1.2mmのAl合金「A5183」を使った。

新技術を用いてステンレス合金の基材にAl合金層を重ねた多層造形体も作製した。
多層造形体から試験片を切り出して引っ張り試験を実施したところ、平均125MPaの引っ張り強度が得られ、実用的な接合強度があることを実証できた。
今回開発した技術はSUS304とA5183に限ったものではなく、Al合金と鉄系合金に幅広く応用可能で、今後の適用拡大が期待できるとしている。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15594/